犬の歯の病気と治療 治療事例

破折(抜髄根管充填)

破折(折れた歯)の治療

歯が折れた時の選択肢は2つです。

①歯を残すための処置をする(保存修復、直接覆髄、間接覆髄、抜髄根管充填)

②歯を抜く

※麻酔をかけられない事情がない限り、「様子を見る」は基本的にしません

→様子を見ていると歯髄から感染を起こし、歯を支えている顎の骨が溶け、目の下に穴が開いたり、菌が全身に悪さしたりするからです。

→また、本当はめちゃくちゃ痛いはずです。人間でも虫歯があったり、少し歯医者さんで歯を削られるだけでも痛いのに、神経が露出している状態で痛くないはずがありません。でも言葉が喋れないので気づいてもらえないケースがほとんどです。

歯が折れて、歯茎も削れてしまっています。さらにその上に歯石がついています。

歯の神経(根管)が感染を起こして目の下に穴が空いていました。

感染が起きている部分をきれいにしている所です。

神経を取り除く器械は動物用と人間用で全くサイズが異なります。(倍以上)

人用の器械で治療できることも多々ありますが、上の写真のように中型犬以上では長い器具が必要で、アメリカから輸入しています。(2019年現在日本では製造されていないため)

小型犬種では人用の電動のNiTiファイルと言う器械も使用可能なため、電動で治療する機会が多いです。
・使用しているNiTiファイル:VortexBlue、NEX、XP-endo、BioRace、LightSpeedなど
・使用しているロータリーエンジン:トライオートZX2

 

現在はこの処置を行う際は特別な事情が無い限り100%ラバーダムというゴムの保護シートを使って、術野を最大限衛生的な状態で処置できるような環境を整えてから手術を行っています。(これを行うことにより治療の成功率が上がるという人の歯科医師の意見が多数あるため)

またこれは根管治療に限ったことでは無く、全ての歯科処置に通じてですが、ほぼ100%の治療をマイクロスコープ下で行っています。

暗闇で指に刺さったトゲを抜いてくれる先生と、明るい部屋でルーペを使ってトゲを抜いてくれる先生、どちらに治療をお願いしたいですか?自分なら絶対後者です、だからマイクロスコープを使って全ての処置を行っています。

神経をくり抜く作業が終わったら薬(電動・手動で詰めます)を詰めて蓋をして完成です。

目の下の腫れは完全に治りました。目の下に穴が空いた=抜歯ではありません。(歯周病が原因で穴が空いた場合は抜歯が適応になることが多い)