犬の歯の病気と治療 治療事例

破折(抜髄根管充填)

目の下に穴が空いたら抜歯しかない?

歯のトラブルで目の下に穴が開くことが時々あります。

(当院ではそういった症状でいらっしゃる方は多いです)

 

原因は歯周病か、歯が折れていることが多いのですが、

歯が折れて目の下に穴が空いたり(外歯瘻)、歯茎に穴が空いた(内歯瘻)ケースに関しては、治療で歯を温存して治してあげられる可能性があります。

 

この子は左上の奥歯(第4前臼歯)が折れてしまい、その穴から歯の神経が感染を起こして、

皮膚と歯茎を突き破って膿が出てしまっていました。

ホームドクターの先生が、なんとか歯を残して治療できる手立てがあるのなら治療してあげて欲しいと当院をご紹介くださいました。

 

この子のように、折れただけでなく、すでに感染を起こしている場合、人での治療成功率は80%程度とされ、

折れただけで、感染がまだ起こっていない場合は90%程度の成功率とされています。(ラバーダムやマイクロスコープなどを使用した精密治療での成功率ですので、精密治療ではない場合の成功率は人でも50%以下という報告があります。)

 

獣医歯科では、「折れて感染あり=抜歯が適応!」とされる場合も多いようですが、当院では精密治療を行える器具や薬剤を揃える事で、

折れて感染を起こして目の下に穴が空いても、成功率80%だが(犬猫でのデータは無いので、人のデータを採用)歯が残る可能性があるならトライしたいという飼い主さんの場合には、歯を残す治療をさせていただいております。

 

この子も再診時にはしっかり目の下の穴と歯茎に空いた穴が塞がっていました。長期的にこの状態が維持されることを願っています。

また悪い方の20%に入ってしまい再発した場合は、歯根端切除術など外科対応が選択肢になります。

 

目の下に穴が空いた=抜歯しかない。。。ではありませんので、目の下に穴が空いた原因をよく精査し、適切な治療を受ける事が大切です。

 

【治療前】

目の下の茶色い塊が、皮膚に空いた穴から出た物質の塊

 

歯茎がピンク色に盛り上がっている所が歯茎の穴

 

皮膚の穴を示した写真(柔らかい材料を入れています)

 

治療前Xray(歯の根の周りが黒っぽくなっている所が病変)

治療中(ラバーダムを使用して治療)

治療後

治療直後

 

【治療後3週間目】

目の下の塊がなくなりました

 

歯茎の穴がなくなりました。また、 歯周病治療も同時に行っているので、歯茎全体が薄ピンク色で健康的な歯茎の色になっています。