犬の歯の病気と治療 治療事例

クラウン

クラウン(金パラ、ジルコニア)

【ジルコニアクラウンの設置】

今まで、折れてしまった歯の治療として、

①保存修復(表面を強化プラスチックで補強)

②生活歯髄切断術(神経を保護して表面を強化プラスチックで補強)

③抜髄根管充填(神経を取り除いて表面を強化プラスチックで補強)

 

上記3つを行なってきましたが、いずれも表面は強化プラスチックで覆うという治療であったため、その部分の強度が元々の歯の強度よりも劣るという問題点がありました。

この治療でも問題無く、表面を欠けさせることなく何年も過ごしてくれる子は多くいるのですが、それと同時に少数の子ではありますが、再び硬いものをかじって歯を折ってご来院される子がいらっしゃいました。

今まではそう言った欠けた部分を再度コンポジットレジンという材料で補強していたのですが、より強い材料で補強したいという思いはずっと持っていました。

 

強度を補うための方法として、人同様クラウン(俗にいう銀歯)を動物に応用することは、以前からアメリカ獣医歯科専門医からトレーニングを受け、実施を検討してきました。

しかし「歯を1周小さくなるように削って型を取れば良い」、というざっくりした指導で、そこに理論が無いことは明白でした。事実、設置しても外れてしまったり、割れてしまったりすることは間々あるという話でした。

そのため、理論的に納得できる治療法が見つかるまでは、自分は動物に応用することは見送ろうと考えていました。

 

しかし今回、人の歯科医師のコースである、Club GP Advance seriesという年間コースを1年かけて受講させていただいたことで、支台歯形成に対する理論(歯高さの何%をどれぐらいの角度で削れば良いかなど)、クラウンを装着する際の接着の理論(サンドブラスト処理など)、形成をマイクロスコープを用いて精密に行う方法などを学ぶことができ、また多くの素晴らしい歯科医師の先生方から色々なアドバイスをいただき、それらを自分なりに動物に応用しても大丈夫なように変換して、クラウンの設置法を考えることができました。

実際に応用した例がこちらで、上から、「割れた状態➡︎根管治療+APF➡︎ジルコニアクラウン設置後」です。

今回自分がジルコニアクラウンを採用した理由は、銀歯を設置した場合に、この子がもし金属アレルギーを発症したら、再度麻酔をかけて、せっかく入れたクラウンを外し、改めて他の材質のクラウンを作成・装着しなければならなくなるため、極力本人の麻酔回数を減らすこと、飼い主さんに費用的なご負担を減らす事を目的にジルコニアを選択しました。

 

ジルコニアは、金パラ(銀歯)に比べやや外れてしまう確率が高いとも言われていますが、そこはClub GPで教わった外れづらい接着法を最大限に応用したので、一生外れる事なく過ごしてくれるものと信じています。

 

今後も、どうしても再度の破折を起こしてしまう子にはクラウンの装着をご提案していこうと考えています。