猫の歯の病気と治療 治療事例

歯肉口内炎(尾側口内炎)

歯肉口内炎(尾側口内炎)は抜歯?

歯肉口内炎(尾側口内炎)の治療の基本は【抜歯】です。

 

それはなぜか?

 

『口内炎』は人のイメージからするとアフタ性口内炎(1−2週間で治るもの)をイメージされる方が多いと思いますが、猫の歯肉口内炎は全く違う病態です。

人のアフタ性口内炎の原因は、はっきりとは分かっていないものの、ストレスや疲れによる免疫力の低下、睡眠不足、栄養不足などと考えられています。

それに対し猫の歯肉口内炎は、こちらも原因ははっきりしていませんが、免疫の暴走と考えられています。

 

どのような暴走かと言うと、①歯や②歯を支えている歯根膜、③歯の表面に付着しているプラーク(細菌)に対して、本来①歯や②歯根膜は自分のカラダであって、攻撃対象では無いはずなのに、誤って自分自身を攻撃してしまい、その結果として歯肉に強い炎症反応が起こってしまう状態です。

そのため、攻撃の対象となっている①歯や②歯を支えている歯根膜、③歯の表面に付着しているプラーク(細菌)を取り除く必要があるわけですが、③のプラークは、歯ブラシや病院でのクリーニングで一時的に取り去ることはできますが、①歯や②歯根膜に対する攻撃はクリーニングではどうすることもできません。

 

そのため、これらを取り除く処置である【抜歯】が推奨されているのです。

 

歯肉口内炎において、抜歯以外の治療方法として提案されるものとして、ステロイドや免疫抑制剤の投与、抗生剤の投与、インターフェロンの投与、レーザー照射等があります。いずれも当院で実施可能な治療ではありますが、いずれも①歯と②歯根膜に対しては全くアプローチしていない、対症療法でしかないため、根治(治療からの解放)を目指すのであれば、【抜歯】以外の選択肢は現状無いと考えます。

 

猫の歯肉口内炎は非常に痛みの強い病気です。

よだれが垂れたままになってしまったり、痛みから食事が取れなくなったり、大きな口を開けてのあくびができなくなったりします。

確かに歯を失うことは猫ちゃんにとっても、飼い主様にとっても嬉しい処置ではありません。(自分自身、動物達の歯を保存するために日々勉強しているので抜歯はしたくありません)しかし、ずっと強い痛みを抱え続けながら生活していくよりは本人が楽になるため【抜歯】が推奨されるのです。

 

当院では歯を保存する方向での治療(再生療法や神経を抜く治療など)をご提案することを基本としていますが、猫の歯肉口内炎と吸収病巣は、数少ない【抜歯】をこちら側からご提案する病気です。

 

一日も早く痛みから解放してあげましょう!!