歯のブログ

硬い物を噛むと歯が丈夫になる?

なりません。

硬い物を噛んで丈夫になるのは噛むための顎の『筋肉』であって、『歯』は強くなりません。硬い物を噛むと歯は壊れるだけです。

 

犬や猫が物を噛むために使っている主な歯は、上顎第4前臼歯と、下顎の第1後臼歯です。ですから硬い物を噛んで、歯を折ってしまって治療して欲しいという患者さんの大多数はこの歯(特に上顎第4前臼歯が圧倒的)が折れて受診されます。

飼い主様としては良かれと思って与えたおもちゃが、ヒズメが、硬いチーズが、歯を折る原因になってしまうのです。

「だって歯に良いって書いてあったんだ!」

皆さんこうおっしゃるのですが、硬い物を噛んでも『歯』は強くなりません、これが真実です。

 

そもそも「エナメル質」という、動物の身体の中で最も硬い物質が歯の表面を覆ってくれているために、ちょっとやそっとでは歯は壊れないのですが、この部分の厚みが犬猫では人間の数分の1しかありません。つまり歯を守るための【盾】が非常にペラペラなんです。

さらに、犬猫の歯の噛み合わせの構造は、人が上の歯と下の歯の面と面ですりつぶすような構造をしているのに対し、物を切断するためのハサミのような構造になっています。

この構造が故に、人であれば面同士で力を分散させることができるのに対し、犬猫は力が歯の局所に集中するため歯が割れてしまいます。

このように歯自体も、噛み合わせの構造も人よりも弱いのです。にも関わらず噛む筋力は人よりも強い。弱い構造体に強い力をかければ崩壊するのは必然です。

ですから犬猫に硬い物をあげるのは避けましょう。硬い物を噛ませても歯は丈夫になりません。歯ブラシをしましょう。

もし万一歯を折ってしまったらお早めに受診下さい。マイクロスコープ、ラバーダム、NiTiファイル、加熱式ガッタパーチャ、MTAなどなど、様々な器材、材料を用いて極力歯を温存できるように努めます。

この歯は使ったから折れたわけなので、使う歯を温存してあげることは重要だと私は考えます。

※ちなみに、あげて良い硬さの目安は、ハサミで切断できるものかどうかです。ドライフード はほとんど丸呑みにしてしまうため問題ありません。