安全に麻酔を行うために①(術前検査へのこだわり)
麻酔を安全に行うためにはしっかりとした術前検査が非常に大切です。
どんな検査を行えば「しっかりした術前検査」と言えるでしょう?
私の考える「しっかりした術前検査」は
・聴診、視診、触診、体重測定、検温
・血液検査(完全血球計算、生化学一般検査、凝固検査)
・腹部Echo検査
・胸部Xray検査
・心電図検査
です。
(当院では上記の手術前検査割引セット価格で約2万円)
これに中〜高齢猫では心臓病マーカー(血液検査)、甲状腺機能検査(血液検査)を追加し、
犬で心臓に雑音やXrayで心臓拡大を認めた場合には心臓Echo検査を追加して行っています。
必要に応じ尿検査や細菌培養感受性検査、便検査等を追加することもあります。
万一フィラリアの予防をされていない方の場合はそれも追加で調べます。
これを手術の前1週間以内に行います。2週間以上前のデータは今のその子の状態を反映しているかがわからないため採用致しません。
このように麻酔をかけないと実施できないCT、MRI検査以外の検査は一通り診せていただいた上でしか麻酔をかけて歯の治療を行うことはありません。
「最近健康診断として血液検査を受けて健康と言われたんですが、それでも術前検査を受けなければなりませんか」というご質問をいただくことが時々ありますが、当院では全ての子に上記の検査を受けていただいております。
理由は、血液検査や腹部Echo検査など、いずれの検査も、一つを行っただけでは気づくことができない病気が山ほどあります。
検査というのは複数行うことでお互いの検査の欠点を補完し合うことで、その子の本当の状態を知ることができます。そのため血液検査単独の結果では、健康を証明するには全く不十分なのです。
また歯科手術は出血を伴うことが多いため、凝固検査も必ず行います。出血した部位の血が止まらないような事があっては困るからです。(当院では歯科以外の開腹手術などの際も必須の検査として行っております)
これらの検査を実施し、麻酔に十分耐えうると判断できた場合にしか歯科手術をお勧めすることはありません。
【無麻酔歯石除去についての考え方②】でも書かせていただきましたが、健康な状態と判断される場合の麻酔リスクはそう高いものではありません。ただし、「健康な状態と判断される場合」は、です。
その「健康な状態と判断」するためには、「しっかりとした術前検査」が必須であると当院では考えております。